世界の企業研究

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ブリヂストン銘柄分析 〜タイヤとソリューションビジネスを提供するグローバルメーカーの企業研究~

概略

ブリヂストンは東京都中央区に本社を置くタイヤメーカーです。

ブリヂストンミシュラングッドイヤーの3社がタイヤメーカー世界御三家と言われています。

事業進出国は150を超え、海外売上比率が約8割の日本を代表するグローバル企業です。

 

https://www.bridgestone.co.jp/saiyou/recruit/introduction/

 

事業内容分析

タイヤ事業

ブリヂストンの主力事業はもちろんタイヤです。

自動車のタイヤから自転車、バイク、バス、特殊タイヤなどさまざまなタイヤを製造販売しています。

簡単な構造に見えるタイヤですが雨の日でもスリップしない溝や空気圧など技術が求められ、プレミアム商品なども展開しやすい分野です。

ブリヂストンは特にプレミアム商品に注力して差別化を図っています。

また、特殊タイヤとは建設・鉱山、農業で使用される車両のタイヤです。

鉱山は過酷な自然環境のため、車で唯一地面に接するタイヤの役割は非常に大きいです。

特殊タイヤにおいてもブリヂストンは技術力とブランドを活かして事業を展開しています。

 

ソリューションビジネス

ブリヂストンはタイヤに新たな価値を付けるべくソリューションビジネスを展開しており、ITの力を活用しています。

運送ソリューションでは、IoTやデジタルツールを活用することでタイヤのライフサイクルの情報を管理しています。

これにより、パンクや故障といったタイヤに関する運行トラブルを未然に防ぐことができます。

これは航空機のタイヤでも行っており、職人の目に頼っていたメンテナンスの時期を正確に予測できるようになりました。

 

https://www.bridgestone.co.jp/solution/fleet/

 

タイヤは車の部品の中でも安全に寄与する部分が大きいパーツであり、ここをケチると痛い目を見ます。

ただこの部分にITの力を使ってコスト削減や効率化を達成することができれば、新たな価値創造につながるためブリヂストンは注力しているのです。

 

https://www.bridgestone.co.jp/solution/fleet/

 

タイヤ事業の最新業績(2023年度第3四半期)は前年と比べて増加しています。

 

https://www.bridgestone.co.jp/ir/library/result/pdf/r5_4_3_presentation.pdf

 

アメリカ・ヨーロッパでのトラック・バス用タイヤは前年比で減少したものの、乗用車用プレミアムタイヤの販売が向上したことと鉱山用タイヤの販売が好調だったこと、そして為替の影響により前年度と比較して増加しました。

 

各種指標分析

売上高・営業利益

https://irbank.net/E01086/results#c_1を参照し作成

 

ブリヂストンの売上高・営業利益・営業利益率を見ていきたいと思います。

売上はコロナショックの2020年に大幅に減少したものの、翌年には回復しその後は増加を続けています。

コロナショックを除けば長期的に見て売上を拡大していると考えていいと思います。

これはブリヂストンがプレミアム商品に注力するとし、赤字部門や不採算事業を削減・中止するという戦略的なマネジメントが成功したことが理由として挙げられます。

この戦略はうまくいっていると考えられますし、今後も収益の期待できる領域に注力することで売上を拡大できると考えています。

 

EPS(1株利益)

https://irbank.net/E01086/results#c_6を参照し作成

 

続いてEPS(1株利益)です。

EPSは1株当たりいくら儲けて儲けているかを確認するための指標でこの数字が成長しているほど稼ぐ力を伸ばしていると判断できます。

ブリヂストンのEPSはコロナショック時にはマイナスになっていますが、翌年にはプラスに転じています。

ブリヂストンの業績は景気に左右されるということは覚えておいた方がいいかもしれません。

また、2022年には世界的な半導体不足で自動車の生産が停滞したため、ブリヂストンの業績にも影響を与えました。

 

自己資本比率

https://irbank.net/E01086/results#c_12を参照し作成


次は自己資本比率です。

自己資本比率は企業の財務健全性を確認するための指標でこの数字が高いほど安全と言えます。

ブリヂストン自己資本比率は50%を超えており、問題ない数字と言えます。

また、手元キャッシュもしっかりありますので事業継続に不安な部分はありません。

 

配当・配当性向

https://irbank.net/E01086/results#c_24を参照し作成

 

最後に配当・配当性向です。

ブリヂストンの配当政策は業績連動型のため、業績が悪化すると減配があります。

実際にコロナショックの際は減配をしましたが翌年には増配に転じ、その後も増配を続けています。

長期的に見ると増配傾向であり、株主還元に積極的な企業だといえるでしょう。

世界的に圧倒的な地位を築いており、稼ぐ力もありますから今後も配当を伸ばしていくことが期待できますね。

 

今後の展望とまとめ

以上のようにブリヂストンはタイヤとソリューションビジネスを提供するとともに選択と集中を行うことで世界的な地位を築いている企業といえるでしょう。

ブリヂストンは中期経営計画においても「プレミアム事業とソリューション事業」に注力するとしています。

 

https://www.bridgestone.co.jp/ir/library/strategy/pdf/jpn_mbp20231110.pdf?20231113

 

タイヤ事業では今後拡大が見込まれるEVにおいてもプレミアム商品のタイヤを提供することで新たな需要を取り込もうと計画しています。

 

https://www.bridgestone.co.jp/ir/library/strategy/pdf/jpn_mbp20231110.pdf?20231113

 

EVにおいては今までのガソリン車とは異なる価値を提供するタイヤが必要になるかもしれません。

これまでタイヤに求められていた操縦性や乗り心地といった価値に加えてEVでは航続距離の延伸に寄与する軽量化やバッテリー搭載への対応と言った新たな価値提供が求められます。

つまり、車両ごと、顧客ごとに求める価値が異なってくるためタイヤのカスタマイズ性が必要になるとブリヂストンは考えており、そのニーズに対応するべく動いているのです。

 

https://www.bridgestone.co.jp/ir/library/strategy/pdf/jpn_mbp20231110.pdf?20231113

 

ソリューション事業においてはAIなどの技術を活用してタイヤの摩耗予測を強化し、耐久予測ソリューションの進化に挑戦するとしています。

 

https://www.bridgestone.co.jp/ir/library/strategy/pdf/jpn_mbp20231110.pdf?20231113

 

特に鉱山や航空機のタイヤの摩耗予測は顧客にとって非常に重要です。

タイヤの交換を適切なタイミングで行うことで鉱山オペレーションや航空機の運航を止めないことが可能になり、顧客の生産性や経済価値を最大化することにつながります。

このようにブリヂストンはタイヤの売り切りビジネスではなく、ソリューションビジネスを提供することで顧客と長期的な関係になるストックビジネスに変えようとしていることがわかります。

ストックビジネスは稼げるビジネスモデルなのでタイヤの交換というストックビジネスを確立できるとブリヂストンは安定的に収益を上げられる体制に変わるのではないでしょうか。

世界で圧倒的な地位を築いているブリヂストンがさらに成長しようと奮闘しているのは素直に応援したくなります。

タイヤメーカーとしてブリヂストン1強となる日を楽しみにしたいと思います。