概略
アサヒグループホールディングスは「アサヒスーパードライ」をはじめとする酒類メーカーの持ち株会社です。
その他にもカルピス、アサヒグループ食品を子会社に持っています。
日本、欧州、オセアニアで5つのグローバルブランドを持ち、国内ではビール類首位を誇っています。
主な保有ブランドに「アサヒスーパードライ」「三ツ矢サイダー」「カルピス」「バヤリース」「モンスターエナジー」などがあり、様々な飲料で地位を築いています。
事業内容分析
酒類事業
アサヒビールはその名の通りビールをはじめ、アルコールテイスト飲料を製造・販売しています。
ビール類は主力ブランドである「アサヒスーパードライ」、発泡酒は「アサヒスタイルフリー」、新ジャンルでは「クリアアサヒ」「アサヒ ザ・リッチ」を展開しています。
特に「アサヒスーパードライ」は「辛口」という新たな価値を生み出し、現在50以上の国と地域で販売されています。
また、ビール以外にも「ニッカウヰスキー」やノンアルコール飲料の「アサヒ ドライゼロ」、微アルコール飲料である「アサヒビアリー」などを展開しています。
これは「スマートドリンキング」宣言に基づき、お酒を飲む人も飲まない人も楽しめる社会の実現を目指したもので、ビール類を中心に様々な商品を展開しているのです。
酒類事業の最新業績(2023年度第3四半期)は前年と比べて増加しています。
これは値上げなどの価格改定が効いたということと業務用のビールが回復したことによるものです。
コロナの行動制限が去年よりも緩和されており、飲食店でビールを飲む人が増えたことでアサヒビールの需要も伸びました。
また、ビール類以外の洋酒、アルコールテイスト飲料も前年を上回ったことも売り上げ増加に貢献しました。
飲料事業
飲料事業はアサヒ飲料の領域です。
アサヒ飲料の展開する商品カテゴリーは
- 炭酸飲料
- コーヒー
- 乳酸菌飲料
- お茶
- 果実・野菜飲料 等
があります。
展開するブランドも「三ツ矢サイダー」や「カルピス」、「ワンダ」、「ウィルキンソン」などロングセラーブランドを多数抱えています。
現在飲料業界で第3位の位置につけており、国内市場でもある程度のシェアを獲得しています。
飲料事業の最新業績は前年と比べて微増しています。
乳性飲料やコーヒー飲料は減少していますが、炭酸飲料やミネラルウォーター、お茶飲料が新商品効果もあり、増加しています。
また、飲料が一番売れる夏に天候不順がなかったことと行動制限の緩和により外出が増え、それに伴って飲料の売上も増加しました。
食品事業
食品事業はアサヒグループ食品の領域です。
「ミンティア」や「クリーム玄米ブラン」などの菓子や味噌汁のフリーズドライ食品、ベビー関連分野、ヘルスケア分野などの商品を製造するコンシューマ事業と業務用の食品を製造する食品原料事業を展開しています。
食品事業の最新業績は微増しています。
海外事業
アサヒグループHDは海外展開も行っており、欧州、オセアニア、東南アジアで事業を行っています。
欧州においては「アサヒスーパードライ」とはじめとするグローバルブランドのポートフォリオを構築しており、ローカル市場の強固な事業基盤とプレミアム戦略を展開しています。
オセアニアにおいては酒類と飲料を展開しており、プレミアム化に適したポートフォリオを構築しています。
今後人口が増加すると見込まれている地域なので酒類・飲料の堅調な需要が拡大するとされています。
そのため、アサヒグループHDは注力しています。
東南アジアにおいては主に飲料事業を展開しています。
成長が見込まれる市場なので、全体的にも市場規模が拡大するとされており、アサヒグループHDも注力しています。
また、健康志向の拡大とアサヒグループが展開する無糖飲料の親和性もあり、高付加価値商品の展開も同時に行うことで現地企業と差別化を図るとしています。
海外事業の最新業績は全地域で前年と比べて増加しています。
欧州においては販売数量自体は減少したのですが、値上げやプレミアム商品の単価向上により売上が増加しました。
オセアニアにおいても価格改定効果による単価向上や業務用の飲料が回復したため売上が増加しました。
各種指標分析
売上高・営業利益
アサヒグループHDの売上・営業利益・営業利益率を見ていきたいと思います。
売上、営業利益ともに近年は毎年増加していることがわかります。
2019年から2020年にかけてはコロナウイルスの影響により減少しているのですが、その後は回復に転じているという状況です。
飲食店での飲酒が制限されていたコロナ禍においては、自宅用のビールやビールテイストの低アルコール飲料を展開したため、不況においてもすぐに増収に転じたと考えられます。
また、営業利益率も食品・飲料メーカーとしては比較的高い数字です。
グローバルブランドを多数抱え、競争力のあるビジネスを展開している証拠と言えるでしょう。
今後は行動制限の緩和により飲食店でお酒を飲む人がさらに増えると予想されますし、インバウンドによる消費も期待できます。
そのため、アサヒグループHDもそれに伴って売上、営業利益を伸ばしていくのではないでしょうか。
EPS(1株利益)
次はEPS(1株利益)です。
EPSは1株当たりいくら儲けているかを確認するための指標でこの数字が成長しているほど稼ぐ力を伸ばしていると判断できます。
アサヒグループHDのEPSは長期的に増加傾向にあります。
海外展開も堅実に行っていますので今後もEPSを伸ばしていくことが予想できます。
自己資本比率
続いて自己資本比率です。
自己資本比率は企業の財務健全性を確認するための指標でこの数字が高ければ高いほど安全と言えます。
アサヒグループHDの自己資本比率は30~40%です。
同業他社であるキリンも30~40%、サッポロは20%後半であり自己資本比率が低いということはないと思います。
同業他社と比較することも大切なポイントになりますね。
個人的にも改めて同業他社と比較することが大切だと感じました。
現金
アサヒグループHDの現金を見ると300億~500億円を推移しています。
2023年度では売上が2兆円を超えているのに対して手元キャッシュが374億円しかないということになります。
規模を考えても現金がやや少ない印象を受けます。
事業内容で不安な部分はないのですぐにどうこうなるということはないと思いますが、現金がやや少ないということは念頭に置いていた方がいいでしょう。
配当・配当性向
最後に配当・配当性向です。
アサヒグループHDの配当は増配傾向にあり、15年連続で増配を続けています。
外食が控えられたコロナ禍においても増配をしたということで株主還元にも積極的な企業と言えるでしょう。
また、配当方針については「配当性向35%程度を目途とした安定的な増配」を行うとしておりコロナ禍の2020年以外は35%近辺の数字となっています。
累進配当を明言しているわけではないので業績が悪化したときには減配する可能性がないわけではありませんが、飲酒が控えられたコロナ禍でさえ配当性向は50%程度です。
つまりコロナ禍においても利益をしっかりと出し、その利益内で配当を出しています。
そのため、減配するときは何かとてつもないことが起きたときになるのではないでしょうか。
今後の展望とまとめ
以上のようにアサヒグループHDはビールを軸にしながら飲料・食品など様々な事業を行い、競争力のあるビジネスを行っている企業と言えるでしょう。
アサヒグループHDの強みは事業構成比がビールに偏ることなく非常にバランスが良いということだと思います。
少し古い資料にはなりますが、酒類が約4割、飲料が約2割、海外が3割となっています。
また、海外事業が順調に成長していることも強みです。
日本は人口減少によりお酒を飲む人の母数自体が減っていきます。
そのため、海外展開は今後の成長のカギになるのです。
アサヒグループは近年海外事業の売上を増やしているので今後も増えていくことが期待でき、経営方針も間違っていないと考えられます。
海外での認知度を高めるためにラグビーワールドカップのスポンサーを務めるなど様々な施策を展開していることも好ポイントです。
今後も事業バランスよく事業を行っていくと予想できますし、個人的にアサヒスーパードライが好きなので応援したい企業です。