世界の企業研究

世界の企業を知っていこう

JT銘柄分析 ~グローバル寡占たばこメーカーの企業研究~

 

概略

JT日本たばこ産業は東京都に本社を置くたばこ・食品メーカーです。

主力製品はたばこで、そのほかに医薬品・加工食品を製造しています。

たばこは売上の半分以上を海外で稼いでおり、たばこ会社では世界第4位のグローバル寡占企業です。

製造しているブランドして「メビウス」「セブンスター」などがあります。

 

https://www.jti.co.jp/investors/library/presentation/pdf/20230926_01.pdf

 

事業内容分析

たばこ事業

JTの主力事業はたばこであり、世界130以上の国と地域でたばこ製品を販売しています。

世界の紙巻きたばこ市場は販売量が減少しているなかでJTは大型のM&Aで規模を拡大してきました。

2018年にロシア4位の「ドンスコイ・タバック」、バングラディシュ2位の「アキジグループ」を買収しています。

 

https://www.jti.co.jp/investors/library/presentation/pdf/20230926_01.pdf

 

M&Aを通じて海外事業の拡大を行い、JTは世界の主要市場でシェアを握るまでになりました。

 

https://www.jti.co.jp/investors/library/presentation/pdf/20230926_01.pdf

 

日本を含め、先進国ではたばこ市場は縮小する見込みですが、たばこの需要は近年は新興国にシフトしています。

この背景には新興国での人口増加、消費者の所得水準の向上があげられます。

また、JTをはじめとするたばこメーカーが電子タバコなどの新しい商品を展開したこともたばこの消費者層の拡大に貢献しています。

今後は日本では電子タバコといった高付加価値な商品を展開するとともに、海外事業の紙巻きたばこで大きく利益を取っていくと考えていいでしょう。

たばこ事業の最新の販売数量の実績は前年と比べて増加しています。

紙巻きたばこは2.1%の増加、加熱式たばこは8.2%増加しました。

 

https://www.jti.co.jp/investors/library/presentation/pdf/20231031_02.pdfを参照し作成

 

まだ紙巻きたばこが販売数量の過半数以上を占めていますが、伸び率で言えば加熱式たばこが成長の余地がありそうです。

紙巻きたばこでは特にトルコや新興国で需要が伸び、販売数も増加しました。

また、日本国内では外資系の競合企業が紙巻たばこの事業縮小を探る中で、JTは低価格品の品ぞろえを増やして需要を取り込みました。

ただ、全地域で販売数量が伸びたわけではなく、フィリピンやイギリスにおいては減少しています。

加熱式たばこでは、ヨーロッパでPloom Xという加熱式たばこのデバイスを新発売したことで販売数量を伸ばしました。

財務実績は値上げの実施と為替の影響もあり、たばこ製品の売上収益は前年と比べて7.4%増加しました。

 

https://www.jti.co.jp/investors/library/presentation/pdf/20231031_02.pdfを参照し作成

 

今後は成長が見込める加熱式たばこのPloom Xを拡大することでさらなるユーザーの獲得と定着を目指すとしています。

 

https://www.jti.co.jp/investors/library/presentation/pdf/20231031_02.pdf

 

海外展開も積極的に行っており、ヨーロッパでPloom Xの販売を開始しています。

今後も販売地域を拡大することとしています。

 

https://www.jti.co.jp/investors/library/presentation/pdf/20231031_02.pdf

 

医薬事業・加工食品事業

JTはたばこ事業がメインの事業ですがそのほかにも医薬品・加工食品事業も展開しています。

医療事業では医薬品を自社だけでなくパートナー企業やグループ会社と共に研究開発しています。

加工食品事業では冷食・常温事業、調味料事業を展開しています。

冷食・常温事業は完全子会社であるテーブルマークを中心に冷凍うどんやパックご飯を製造販売しています。

医療事業・加工食品事業の最新業績は医療事業は前年と比べて伸長し、加工食品事業は減少しました。

加工食品事業は外食需要の回復による業務用製品の伸長がありましたが、ベーカリー事業を譲渡したことによる売上収益の剥落により減少しました。

 

https://www.jti.co.jp/investors/library/presentation/pdf/20231031_02.pdf

 

各種指標分析

売上高・営業利益

https://irbank.net/E00492/results#c_1を参照し作成

 

JTの売上高・営業利益・営業利益率を見ていきたいと思います。

JTの売上・営業利益ともに近年は毎年増加しています。

たばこ産業は衰退産業と言われていますが、新規参入が難しく、少数の企業が生産や販売市場を支配している状態が世界的に継続しています。

また、新興国ではたばこは嗜好品として楽しまれておりまだまだ需要は高いです。

そのため今後も安定した収益を計上する状態は続くでしょう。

また、営業利益率が20%を超えており、極めて高い状態です。

一般的に10%を超えると優良企業と言えますので20%は非常に高い数字とわかると思います。

利益率が高く、競争力のあるビジネスを展開している証拠ともいえるでしょう。

 

EPS(1株利益)

https://irbank.net/E00492/results#c_5を参照し作成

 

次はEPS(1株利益)です。

この数字は1株当たりいくら儲けているかを判断するための指標でこの数字が成長しているほど稼ぐ力を伸ばしているといえます。

JTのEPSは毎年増加しています。

たばこという利益率の高いビジネスを行っていること、海外展開も積極的に行っていることから毎年増加しています。

今後もたばこという参入障壁の高い寡占市場にいるJTは稼ぐ力を高めていくことが予想できます。

 

自己資本比率

https://irbank.net/E00492/results#c_11を参照し作成

 

続いて自己資本比率です。

自己資本比率は企業の財務健全性を確認するための指標でこの数字が高ければ高いほど安全と判断できます。

JT自己資本比率は40~50%と良い数字です。

手元のキャッシュも潤沢にありますので事業継続に不安な部分はありません。

財務健全性は問題ないといえるでしょう。

 

配当・配当性向

https://irbank.net/E00492/results#c_23を参照し作成

 

最後に配当・配当性向です。

JTは業績連動型の配当方針をとっています。

配当性向75%を目安としていますので業績が悪いときは減配されます。

実際に2021年には減配を行っています。

しかし、たばこという参入障壁が高く、利益率が高い商品を扱っていますので翌年には増配しています。

高配当銘柄として人気なJTは今後も高配当を続けていくと予想しています。

 

今後の展望とまとめ

以上のようにJTは、グローバル寡占企業として利益率の高い事業を行っている企業と言えるでしょう。

今後のたばこ市場は販売数量ベースでは紙巻きたばこが最大のカテゴリーであるものの、成長率は加熱式たばこが高まっていくとJTは予想しています。

 

https://www.jti.co.jp/investors/library/presentation/pdf/20230926_01.pdf

 

そのため、今後はPloom Xなどの加熱式たばこ関連に投資を行う方針としており、特にマーケティングに力を入れるとしています。

 

https://www.jti.co.jp/investors/library/presentation/pdf/20230926_01.pdf

 

株主還元の話をすると、JTの株主還元は

  • 強固な財務基盤を維持しつつ、中長期の利益成長を実現することにより株主還元の向上を目指す
  • 資本市場における競争力ある水準として、配当性向75%を目安とする
  • 自己株式の取得は、当該年度における財務状況及び中期的な資金需要等を踏まえて実施の是非を検討

としています。

JTは業績連動型の配当政策をしているため、減配の可能性も一定程度あると考えていた方がいいと思います。

ただ、極めて高い利益率と優良な財務基盤を持っているため、今後も増配が期待できるのは間違いありません。

日本を代表する企業のうちの一つだと思いますので今後も海外事業などを拡大してほしいと思っています。