概略
漁業、養殖、買付から生産・加工、販売まで一貫して行う世界最大規模の水産物サプライヤーであり、世界中に水産物を安定供給しています。
海外の主な拠点も全世界に広がっており、全世界でビジネスを行うグローバル企業でもあります。
事業内容分析
マルハニチロは水産に強みを持ちながら、グローバルなバリューチェーンを構築し、加工食品・畜産など幅広い事業を展開しています。
水産資源セグメント
水産資源セグメントは
- 漁業ユニット
- 養殖ユニット
- 水産商事ユニット
- 海外ユニット
に分かれています。
漁業ユニットとは「獲る漁業」であり、世界中の漁場で漁獲、生産された水産物を日本を含めた世界中に安定供給しています。
マルハニチロは外国船の操業規制が強化されているニュージーランドにおいて唯一漁獲枠を保持しているなど漁業アクセス権益を保有しています。
養殖ユニットとは「育む漁業」であり、マルハニチロは海洋環境にやさしい持続的な養殖を行うことで、世界中で高まる水産物需要に応えるとしています。
マルハニチロのマグロの養殖生産量は年間4,660トンで国内シェアの28%を占めています。
また、カンパチの生産量は年間2,980トンであり、国内シェアの10%を占めるなど養殖のトップランナーと言えるでしょう。
水産商事ユニットは「買う漁業」であり、マルハニチロは世界の水産物のトップトレーダーとして、日本だけでなく世界中に水産物を安定供給しています。
買付の例として、海老を年間40,000トン輸入しておりこれは国内シェアの18%を占めます。
また、タコは年間6,100トンを買付けており、国内シェアの32%を占めるなど様々な水産物を輸入しています。
海外ユニットは「アクセスする漁業」であり、マルハニチロは世界中にグループ会社を有しグローバルにビジネスを展開しています。
特にアメリカのベーリング海産のスケソウダラへのアクセス力に強みを持ち、北米・欧州・日本向けに販売しています。
水産資源セグメントの最新業績(23年9月期)は前年度と比べて減少しました。
漁業については主要な魚の販売が好調で増収となった一方で、漁船の稼働が低下したことによる漁獲数量の減少と燃料の高騰の影響を受け営業利益は減少しました。
養殖については主力であるブリ・カンパチの販売数量の増加と取り扱う魚の価格が高値を維持しているため売上は前年並みとなった一方でエサ代などの価格が高騰したため営業利益は減少しました。
水産商事については水産物全体の価格が高値圏のため売上高は前年並みとなった一方で国内において消費が減少した魚の在庫整理を実施したため営業利益は減少しました。
海外事業においては欧州では増収増益になったものの北米・アジアで減益となりました。
加工食品セグメント
加工食品セグメントには
- 加工食品ユニット
- ファインケミカルユニット
があります。
加工食品ユニットは幅広いカテゴリーを持つ冷凍食品や缶詰、フリーズドライ食品などを製造販売しています。
特にお弁当向けの冷凍食品では国内シェアの23%を占めており、缶詰においてはサケ缶が国内シェア78%、サバ缶が国内シェア33%と業界内でも確固とした地位を築いています。
ファインケミカルユニットでは水産原料由来で開発された素材をサプリメントなどを通して供給しています。
特にDHA(健康食品用)の生産量は国内シェア50%を誇っています。
加工食品セグメントの最新業績は前年と比べて増加しています。
これは主に値上げを実施した効果がでたことが要因です。
加工食品では売上は減少したものの、値上げを実施したことと生産性の向上により営業利益は増加しました。
ファインケミカルでは原料費の高騰などの要因により、減収減益となりました。
食材流通セグメント
食材流通セグメントでは
- 食材流通ユニット
- 畜産ユニット
があります。
食材流通ユニットでは原料調達力や商品開発力などの強みを生かして様々な業態ニーズに対応しており、畜産ユニットでは牛肉・豚肉・鶏肉や加工品などを調達、加工、販売しています。
食材流通セグメントの最新業績は前年と比べて増加しています。
価格改定の浸透と業務効率化により、158%増益しました。
食材流通では外食やコンビニエンスストアへの販売が堅調に推移しました。
また、商品の値上げを業務効率化によって増収増益となりました。
畜産においては値上げの浸透と輸入肉の販売が堅調に推移し増収増益となりました。
物流セグメント
物流セグメントには物流ユニットがあります。
主要な貿易港を中心に物流拠点を展開し、輸配送網を築いています。
冷蔵倉庫では水産・冷凍食品などを保管し、全国の流通に貢献しています。
物流セグメントは前年と比べて増加しています。
これは大都市圏を中心に保管需要を取り込んだことと、電気料金などのコスト上昇を価格に転嫁したことが要因です。
各種指標分析
売上高・営業利益
マルハニチロの売上高・営業利益・営業利益率を見ていきたいと思います。
売上は2023年まで増加していましたが、2024年に微減となりました。
これは主力事業である水産資源セグメントが厳しいためです。
燃料や飼料の高騰などにより、減少しています。
コストが高騰しているため、営業利益率も低い状態が続いています。
ただ、水産というコストがかかる事業を展開しているため営業利益率が低いのは理解できますし、2%前後で安定していると見ることもできます。
この点についても同業他社と比較することが重要になってくるでしょう。
EPS(1株利益)
続いてEPS(1株利益)です。
EPSは1株当たりいくら儲けているかを確認するための指標でこの数字が成長していれば稼ぐ力を伸ばしていると判断できます。
マルハニチロのEPSは成長しているとみていいと思います。
2023年から2024年にもわずかではありますが増加しており、順調に稼ぐ力を伸ばしていると考えられます。
水産だけでなく、加工食品や物流など幅広い事業を展開してますので水産が立ち直ればさらに伸びていくのではないでしょうか。
自己資本比率
次は自己資本比率です。
自己資本比率は企業の財務健全性を確認するための指標でこの数字が高いほど安全と考えられます。
マルハニチロの自己資本比率は20%~30%であり、やや低い数字です。
しかし、この点においても同業他社と比較することが大切です。
そのため極端にマルハニチロが低いというわけではないと思います。
配当・配当性向
最後に配当・配当性向です。
マルハニチロの配当は近年毎年増加しています。
マルハニチロの配当政策は業績連動型なので業績が悪いときは減配がありますが、方針としては安定配当を継続的に実施していくとしています。
配当性向を見ても20%に届かず、今はその利益を事業成長に使っているのでしょう。
ただその利益を配当に回せることもできるというわけなので今後増配も期待できると思います。
今後の展望とまとめ
今後は世界の気候変動や水産資源の減少という地球規模の課題があります。
また、水産資源が減少すると各国の規制が強化され、新たな資源にアクセスすることが困難になります。
この課題に対してマルハニチロは既存資源アクセスを強化し、生産性を向上させるとしています。
また、養殖の重要性が非常に高まると考えており、養殖技術の向上により生産性を高めるとしています。
また、北米・欧州・アジアを中心に売上の拡大を図るとしており、今後積極的に海外展開を進めることが期待できます。
マルハニチロが奮闘してくれているおかげで私たちの生活に新鮮な水産物が届きます。
今後、課題も多い領域ですが、応援していきたいと思います。