概略
キッコーマンは千葉県野田市に本社を置く醤油を主にする調味料・食品メーカーです。
醤油では首位の地位を誇り、海外売上比率も7割を超えています。
特に海外における醤油事業は年平均7.3%で成長しており、今後も成長が期待できる領域です。
醤油のほかにはみりんや豆乳、ワインなどを製造していますがやはり主力は醤油であり、醤油業界においては天下無双のキッコーマンと言えるでしょう。
事業内容分析
海外における醤油事業
国内の醤油事業は食料品セグメントの中で30%の割合を占めていますが、一方で海外の食料品セグメントの中では84%を占めています。
キッコーマンの醤油は現在世界100か国以上で販売されており海外に8つの生産拠点を持っています。
海外における戦略のカギは和食を持ち込むことではなく、いかに現地の食材や料理に醤油を使ってもらえるかということでした。
北米では醤油は肉料理に合うということを試食を通じて知ってもらうことで認知度を高めていき、少しずつアメリカの食文化に醤油を浸透させていきました。
そして現在ではアメリカで醤油を製造するまでに至ったのです。
今後はヨーロッパ、アジア、南米市場にも醤油を広めるべくキッコーマンは奮闘しています。
また、海外での醤油事業の年平均成長率は7.6%で、今後も安定的な成長が見込まれます。
特に北米での醤油のシェアはキッコーマンが50%以上を占め、圧倒的なポジションを確保しているのです。
また、米国における醤油のチャネル別の売上も家庭用・業務用・加工用すべてバランスよく伸びており、偏りがないのも強みの一つです。
これはアメリカで醤油という日本の文化が浸透している証拠と言ってもいいと思います。
海外における食料品卸売事業
キッコーマンは醬油事業だけでなく食料品の卸売事業も行っており、海外売上の半分以上を占めています。
卸売事業の拠点もアジア・欧州・北米・南米と世界各地にあり、地域の偏りもないため情勢によってどこかの地域が不調でも他でカバーできる体制になっています。
また、取り扱う商品も家庭用・業務用の偏りがないバランスの良い事業構造になっており、安定した収益を上げることが今後も期待できます。
食料品卸売事業も年平均成長率が9.7%とまだまだ成長する可能性を秘めており、今後もキッコーマンの売上に貢献してくれると確信しています。
海外事業の最新業績
キッコーマンの海外事業の業績(2023年度上期)を見ていくと、北米・欧州では食料品製造・販売(=醤油)、卸売事業ともに前年と比べて増加していることがわかります。
アジア・オーストラリアでは卸売が減少していますが、食料品の製造では増加しています。
海外事業全体の売上で言えば前年よりも増加しており、海外事業が好調なことがわかると思います。
国内の醬油事業
国内の売上のうち半分以上を占めているのが食料品製造・販売事業です。
その内訳は海外と異なり、醤油だけでなく食料品や飲料もあり、海外とは違う戦略をとっていることがわかると思います。
各地域に合う戦略を立てられることがキッコーマンの強みかもしれませんね。
ただ、国内では醤油の生産量、醤油の購入ともに減少傾向にあり、「つゆ・たれ」への支出が増えています。
これは健康志向の高まりから塩分の多い醤油を避けていると考えられます。
そのため、キッコーマンをはじめとする醤油メーカーは「減塩」を謳った醤油を販売しています。
減塩の醤油は近年売上を伸ばしていますが、頭打ち感がある状況です。
また、国内における醤油のシェアはここ数年ほとんど変わっていません。
つまり醤油のシェアを奪い合うというよりも毎年同じシェアを各社が維持しているだけとも言えるでしょう。
家庭の醤油への支出が減る一方で各社のシェアが変わらなければ、売上が減ることになります。
成熟している国内の醤油事業に関しては今後大きな成長は望めない状態なのかもしれません。
その一方で売上を伸ばしている商品もあります。
それが焼き肉のたれや「つゆ」関連の商品です。
また、手軽におかずができる料理の素なども売上を伸ばしています。
醤油で培った技術を他の商品にうまく転換させられる強さをキッコーマンは持っているといえるでしょう。
国内事業の最新業績
国内事業の最新業績(2023年度上期)は昨年度と比較してほぼ横ばいと言えるでしょう。
醤油事業は伸びましたが、食料品はトントンな状況です。
今後は原材料費の高騰などをいかに顧客に転嫁できるかがカギになります。
日本の消費者は値上げに非常に敏感と言われていますので高付加価値の商品を製造販売するなど値上げに対する心理的な壁をいかに超えるかということが重要になるかもしれません。
各種指標分析
売上高・営業利益
キッコーマンの売上高・営業利益を見ていきたいと思います。
売上高・営業利益共に毎年増加しており、順調に成長していることがわかります。
これは上記で述べたように海外での醤油事業が拡大していることが要因です。
国内の食品事業においては、微増となっており毎年安定した収益は確保しているという状況です。
EPS(1株利益)
続いてEPS(1株利益)です。
この数字は1年間にその企業がいくら稼いでいるのか、1株あたりで表したものです。
この数字が増加しているほど稼ぐ力が増えていると判断できる非常に大事な指標です。
キッコーマンのEPSは毎年綺麗に増加しています。
本当に綺麗に成長していて素晴らしいと思います。
毎年確実に稼ぐ力を伸ばしていると判断して良いでしょう。
自己資本比率
次は自己資本比率です。
自己資本比率は、企業の財務健全性を確認するための指標で、一般的にこの数字が高いほど安全とされています。
財務健全性は全く問題ナシといえます。
配当・配当性向
最後に配当・配当性向です。
配当も毎年増加しており、株主還元に積極的な企業と言えるでしょう。
また、配当性向は30%前後で推移しており、まだまだ増配できる余地があるという期待も持てますね。
これらの指標から言えることは、キッコーマンは高い自己資本比率を維持しつつ、借入金に頼らない儲かるビジネスを展開しており、企業としては申し分ない経営を行なっているということです。
指標は素晴らしいと言って良いと思います。
まとめ
以上のようにキッコーマンは財務健全性は鉄壁であり、事業においては海外を成長分野と位置づけ奮闘している企業と言えると思います。
中期経営計画では海外における醤油事業を成長させるべく生産拠点の増産を行うとしています。
国内においては生産性を向上させて収益力を高める計画です。
また、栄養関連のデータを活用して、栄養課題の解決に貢献する商品やサービスを展開するとしています。
これは健康志向の消費者が増えたことで新たな市場が開拓されたと言っていいかもしれません。
このサービスが成功すれば、調味料に関してはキッコーマンしか使用しないという消費者を生み出せるかもしれませんし、海外でも展開できる可能性もあります。
いずれにしてもキッコーマンは今後も非常に安定した経営を行い規模を拡大していくのではないでしょうか。