世界の企業研究

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ニトリHD銘柄分析 ~暮らしの総合提案企業を目指す高利益家具メーカーの企業研究~

概略

ニトリHDは北海道札幌市に本社を置く家具・インテリアメーカーです。

ホームセンター大手の島忠を傘下に持っています。

海外展開も行っており、台湾、中国、アメリカ、シンガポール、マレーシアなどで店舗を展開しています。

上場以来時価総額を伸ばし、現在は上場時の102.2倍に成長しており、今後も成長が期待される企業です。

 

https://www.nitori.co.jp/index.html

 

事業内容分析

ビジネスモデル

ニトリのビジネスモデルの特徴として商品の企画や原材料の調達から販売に至るまでの一連の過程をグループ全体で行う製造物流IT小売業」を確立していることがあげられます。

これらを通して「お、ねだん以上」を実現しているのです。

 

https://www.nitorihd.co.jp/division/business_model.html

 

すなわちニトリは単なる小売企業という機能だけでなく、「メーカー」「商社・物流」「IT」企業でもあるのです。

また、ニトリは海外で商品の約9割を生産し、その商品を輸入するという形をとっています。

全てのプロセスをグループ全体で行うことで中間コストの削減が可能になり、結果として利益率も高めることができるのです。

 

https://www.nitorihd.co.jp/division/business_model.html

 

ニトリ事業

ニトリHDは家具・インテリア販売のニトリ事業を行っています。

ニトリ事業では

  • ホームファニシング事業
  • デコホーム事業
  • ショッピングモール事業
  • リフォーム事業
  • 法人向け事業
  • 通販事業

を行っています。

ホームファニシング事業はソファ、ダイニングテーブルやカーテンなどトータルコーディネートが可能なインテリア製品を販売する店舗事業です。

ニトリと聞いて一番最初にイメージする事業ではないでしょうか。

 

https://www.nitori.co.jp/division/homefurnishing/index.html

 

デコホーム事業は首都圏を中心にホームファッション店舗を展開しています。

ニトリで人気の高いベーシックアイテムを中心に販売したり、小型店という機動力を生かして新商品のテスト販売を行っています。

 

https://www.nitori.co.jp/division/decohome/index.html

 

ショッピングモール事業は郊外に巨大なモールを展開する事業です。

ニトリモールと呼ばれるショッピングモールを東大阪や相模原で展開しており、ファッションや生活用品、飲食やサービスなど代表的なチェーンストアで構成しています。

 

https://www.nitori.co.jp/division/nitorimall/index.html

 

リフォーム事業はその名のとおり、住まいのあらゆる場所をトータルリフォームする事業です。

リフォーム力とコーディネート力を生かした提案を強みとしています。

 

https://www.nitori.co.jp/division/reform/index.html

 

法人事業はオフィスのレイアウトやデザインの提案を行う事業です。

お店のブランディングや集客力向上につながる空間の提案を行うことで企業価値向上に貢献しています。

 

https://www.nitori.co.jp/division/business/index.html

 

通販事業ではネットショッピングサイトを展開しています。

 

https://www.nitori.co.jp/division/estore/index.html

 

ニトリ事業の最新業績(2024年度第2四半期)は前年と比べて減少しています。

 

https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI%20FY2023_2Qfinancial%20%20report.pdf

 

これは原材料の高騰による商品の値上げを行ったことで客単価は上がりましたが、客数が減少したためです。

客数×客単価で前年比0.2%減となりました。

 

https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI%20FY2023_2Qfinancial%20%20report.pdf

 

また、顧客を呼び戻すためのテレビCM費用を増やしたことで広告宣伝費が膨らんだことで営業利益も減少しました。

 

島忠事業

ニトリHDは傘下にホームセンターの島忠を抱えています。

島忠はホームセンター商品と家具・ホームファッションを展開しています。

島忠事業はプライベートブランド(PB)を展開しており、ホームセンターPBと家具PBの商品開発を行っています。

 

https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI%20FY2023_2Qfinancial%20%20report.pdf

 

また、ポイントサービスを内製化することで会員情報や購入履歴などのビッグデータを活用した施策を展開することとしています。

 

https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI%20FY2023_2Qfinancial%20%20report.pdf

 

島忠事業の最新業績は前年と比べて減少しています。

 

https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI%20FY2023_2Qfinancial%20%20report.pdf

 

ニトリHDは家具以外のホームセンターなどに手を広げ、暮らしの総合提案企業に変わろうとしており、その成長の試金石として島忠をM&Aしたという経緯があります。

ホームセンターは日用品をまとめ買いする人が訪れるため、メーカー品より1割程度安いPBを数多く並べて収益を確保しようとしているのです。

しかし、上記にも述べたようにまだ島忠事業はニトリHDの収益に貢献はできていません。

今後は店舗運営や管理の仕組みなどニトリ流に変えていくことが必要になるかもしれません。

 

各種指標分析

売上高・営業利益

https://irbank.net/E03144/results#c_1を参照し作成

 

ニトリHDの売上高・営業利益・営業利益率を見ていきたいと思います。

売上は2023年までは増収増益を続けていましたが、2024年度は減収の見込みです。

これは上記でも述べた通り、値上げによる顧客離れが起き、客単価は向上したものの客数の減少により収益が減少するとしています。

ただ営業利益は増益の見込みです。

ニトリは海外で商品を製造し、逆輸入するビジネスモデルなので円安になると仕入れコストが上がってしまいます。

ただ円安も一服していますので、今後は仕入れコストが負担にならず増益になるというわけです。

また、円安に耐えうる商品開発や原価改善の取り組みを進めており、その点からも増益を見込んでいます。

また、営業利益率は10%を超えており高い数字を維持しています。

製造から販売までグループ全体で行っているためコストを抑えることができ、高い利益率を維持できているのです。

 

EPS(1株利益)

https://irbank.net/E03144/results#c_6

 

次はEPS(1株利益)です。

EPSは1株当たりいくら儲けているかを判断するための指標でこの数字が成長しているほど稼ぐ力を伸ばしていると判断できます。

ニトリのEPSは長期的に見て成長していますし、高い数字です。

今年度は減収増益の見込みですが、事業は堅調に推移していますしEPSに関しても今後堅調に成長していくことが予想できます。

 

自己資本比率

https://irbank.net/E03144/results#c_12

 

続いて自己資本比率です。

自己資本比率は企業の財務健全性を確認するための指標でこの数字が高いほど安全と言えます。

ニトリ自己資本比率は70%前後で高い数字です。

株主から集めたお金を効率的に使ってビジネスを行っていますし、手元キャッシュも潤沢にありますので事業継続に不安な部分はありません。

 

配当・配当性向

https://irbank.net/E03144/results#c_24を参照し作成

 

最後に配当・配当性向です。

ニトリの配当は近年毎年増配しており、18年連続で増配しています。

事業が順調に成長していますので今後も安定的な増配が期待できます。

また、ニトリ株主優待制度を導入しています。

ニトリで使用できるお買物優待券をもらえますのでニトリで買い物をよくする人にとっては魅力的でしょう。

株価が高い銘柄ですので単元株にするのは骨が折れますが株主優待を楽しみにしながら1株ずつ増やしていくのもいいかもしれませんね。

 

今後の展望とまとめ

以上のようにニトリは製造から販売までをグループ全体で一貫して行うことで高い利益率を出し、自己資本比率も高いため財務基盤も優良な企業と言えるでしょう。

ニトリHDの今後の成長のカギは海外展開とM&Aによる多角化です。

 

海外事業

海外事業では主にアジア地域を注力地域としています。

東アジアでは中国をはじめ香港や台湾で出店し、東南アジアではタイやマレーシア、シンガポールで出店しています。

また直近では2023年11月には韓国に初出店しました。

ニトリHDは今後の10年で3000店舗のグローバル企業になるために出店を加速させていくとしており、今後も積極的に開店を進めていくでしょう。

アジアは今後も成長が見込まれる地域であり、中国や韓国では四季があるためライフスタイルに合わせた商品展開ができるため収益拡大が期待できます。

ニトリは製品の大部分を中国と東南アジアで製造しているため、輸送コストが抑えられ、海外事業でも利益を出しやすいのが特徴のため今後も注目していきたいです。

 

https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI%20FY2023_2Qfinancial%20%20report.pdf

 

https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI%20FY2023_2Qfinancial%20%20report.pdf

 

積極的なM&A

ニトリM&Aも積極的に行っています。

将来的に「衣食住」すべてに対応できる暮らしの総合提案企業に変わろうとしているためです。

その皮切りとして島忠をM&Aしたのです。

また、家電量販店のエディオンと資本業務提携を行い、共同開発の家電を販売しています。

衣料品や外食に関してもニトリHDは手を広げています。

アパレル品ブランドである「N+(エヌプラス)」を立ち上げ、30代以上の女性をターゲットにブラウスやスカートを展開しています。

 

https://www.nitorihd.co.jp/ir/items/NITORI%20FY2023_2Qfinancial%20%20report.pdf

 

また、ステーキなどを提供するレストランニトリダイニング みんなのグリル」は現状で4店ですが、今後増やす予定です。

料理は大手ファミリーレストランと同等以下の値段にしていることが売りで店舗ではレトルトカレーの販売も始めました。

 

https://www.nitori-dining.jp/

 

アジア展開やM&Aを今後の成長エンジンにしてニトリは進化を続けるとしており、個人的にさらにニトリが拡大するのが楽しみでなりません。