概略
ロッキード・マーチンはアメリカのメリーランド州に本社を置く軍事用航空機・宇宙船の開発製造会社です。
2020年時点で世界最新鋭のステルス戦闘機であるF-22やF-35の開発・製造を行っていることで有名です。
現在の売上高や営業利益の大部分は戦闘機・軍用輸送機・人工衛星・ミサイル・スペースシャトルなどのアメリカ国防総省やアメリカ航空宇宙局からの受注契約であり、世界でも有数の軍需企業となっています。
ビジネスモデル
ロッキード・マーチンの売上の大部分は軍需関係であり、顧客は国となります。
防衛費は必ず国の予算に組み込まれますのでそれを受注するロッキード・マーチンの業績は非常に安定しています。
また、ロッキード・マーチンは音速の5倍以上のスピードで移動するミサイルの開発などを行っており、技術力が高いです。
そのため技術力が高いロッキード・マーチンは安定して国から受注することができるのです。
国の防衛事業においては技術力の高さが参入障壁と直結することになりますので、技術力の高いロッキード・マーチンが手掛ける防衛事業は参入障壁が非常に高いといえるでしょう。
また、発注するのはアメリカだけではなく、日本もロッキード・マーチンから購入をしています。
閣議決定で防衛費の予算が増加すればその分が丸ごとロッキード・マーチンの売上になると言ってもいいほどです。
その理由としては、戦争が始まった場合に作成される特別予算は基本的に医療費や食糧費、人件費などに充てられ兵器には回ってきません。
また、戦後は復興がメインになりますので新規兵器の購入などに充てる余裕はありません。
しかし、「冷戦」のような軍事的緊張が高まっているときは非常に儲かります。
各国が防衛費の予算を増額しますのでそれに伴って軍需企業の利益は上がるということになります。
このような情勢によって利益は増減するということになるのです。
ロッキード・マーチンのもう一つの収益の柱が「特許ビジネス」です。
戦闘機においては機体だけでなくソフト開発も行っているのですが、このソフトのプログラムには特許が非常に組み込まれています。
例えば、どんな天候でも安定して飛行できるようにヘルメットにデジタル処理された画像を表示する技術があります。
このヘルメットをで下を向けば見えないはずの下の画像が普通に見えますし、センサーで届く範囲なら目で見えなくても画像表示することが可能です。
この技術は車にも応用できると思うのですが、この技術を車メーカーが開発してもすでにロッキード・マーチンをはじめとする軍需企業が特許を取っているのでこの特許を使用するためには特許料を払う必要があります。
このようにしてロッキード・マーチンをはじめとする軍需産業は利益を上げているのです。
各種指標
ここからはロッキード・マーチンの売上高、営業利益、営業利益率を見ていきたいと思います。
まず売上、営業利益ともに毎年安定した数字を計上しています。
また、営業利益率も10%を超えており、製造業としては高い数字を誇っています。
ウクライナでの紛争や米中関係の緊迫を背景に防衛費の予算が増大していますが、新型コロナウイルスの影響でサプライチェーンの混乱が長引き、2022年は減少となっています。
しかし、この混乱が解消すれば売上が上がることが予想できます。
今後の展望とまとめ
以上のようにロッキード・マーチンは高い技術力と特許ビジネスを活用し、国の防衛を支える企業と言えるでしょう。
高い技術力を持つ軍需企業は顧客が国のため、基本的に長期での関係性になります。
そのため、防衛費の予算に左右されることにはなりますが毎年安定した利益をあげることができるのです。
また、ロッキード・マーチンはM&Aにも積極的です。
現在ロッキード・マーチンの主力は航空機と艦船用のミサイルですが、ロケット部門と軍艦部門、戦闘車部門がやや弱いです。
その点で日本の三菱重工業はこの3つの部門で世界トップレベルの技術力を持っています。
さすがに三菱重工業がロッキード・マーチンに買収されることはないでしょうが、業務提携などは全くないというわけではないでしょう。
戦闘車自体は三菱重工業が製造し、ソフトはロッキード・マーチンが製造するというようなモデルは考えられます。
これだと三菱重工業にとってもメリットはありますし、ロッキード・マーチンも弱点を補えることになります。
いずれにしても日米関係や世界情勢という先が読めない環境に左右される企業であるということは間違いないでしょう。
国の防衛を支える軍需企業のトップランナーであるロッキード・マーチン。
高い技術力と特許ビジネスにおいて今後も安定したビジネスを行っていくでしょう。