世界の企業研究

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ジョンソン・エンド・ジョンソン ~毎年安定した利益を計上するヘルスケア企業~

概略

ジョンソン・エンド・ジョンソンアメリカのニュージャージー州に本社を置くヘルスケア関連の多国籍企業です。

世界60カ国以上に250以上のグループ企業を持ち、医薬品、医療機器、一般消費者向けのヘルスケア商品を展開しています。

ジョンソン・エンド・ジョンソンは製薬業界でも最大規模の研究開発費を抱える企業としても知られており、2022年は売り上げの15%に当たる150億ドルを研究開発に費やしています。

さらに、株主還元に積極的であり、配当は60年以上連続で増額され続けています。

 

ジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)の配当金の推移

 

ビジネスモデル

ジョンソン・エンド・ジョンソンの事業セグメントとしては医薬品、医療機器・診断、消費者向けの3つがあります。

 

 

医薬品はその名の通り6つの治療領域に対する薬品を開発・製造をしています。

医療機器・診断は外科手術や整形外科で用いられる医療機器を扱い、クリニックや病院で使用されています。

消費者向けの商品リステリンやバンドエイドなど私たちの身の回りにあるヘルスケア商品を幅広く取り扱っており、現在は「ケンビュー」という別会社に分社化をしています。

この中で医薬品セグメントが最も売上高の割合が高く、医療機器と消費者向けの製品が順に続きます。

先に述べた通り消費者向けのセグメントを分社化したため、今後は医薬品と医療機器に注力をしていくと予想できます。

 

DX戦略

また、ジョンソン・エンド・ジョンソンはDXへの取り組みも積極的です。

詳しく説明していきます。

 

様々なデジタル企業との協業

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、小規模なデジタル企業と共同研究を進めたり、開発の支援をしたり様々な企業と協業して新たなソリューションを生み出そうとしています。

 

①デジタルヘルス系スタートアップ企業の支援

ジョンソン・エンド・ジョンソンは、予測診断モデルと治療管理デバイスに焦点を当てたプロジェクトを立ち上げました。

このプロジェクトは、主に中東、アフリカ、ヨーロッパの実力のある新興企業5社を対象としており、プロジェクトに参加すると、ジョンソン・エンド・ジョンソンからサポートを受けることができます。

実力のある新興企業と組むことで、厳しいデジタル競争を勝ち抜こうとしています。

 

 

②デジタル企業の支援

ジョンソン・エンド・ジョンソンはデジタルに強みを持つ企業と、うつ病に対するデジタル認知行動療法に関する研究を進めています。

この研究の目的は新しい技術を活用して、患者がデジタルヘルスソリューションに簡単にアクセスできるようにし、患者一人ひとりのニーズを満たすことができるようにすることです。

また、片頭痛、脱毛、胃食道逆流症などの患者向けに、手頃な価格で個別化されたケアモデルを構築している企業に出資を行いました。

この出資により、慢性疾患を持つ人々の生活の質を向上させるイノベーションを実現することが可能になります。

他にも手術前と手術中の手順をシミュレートできる医療画像の3Dモデルを作成する企業や電子カルテや保険請求などを分析し、価格設定やその他の重要な意思決定のためのデータを作成する企業への投資も行っています。

 

 

ウェアラブル技術開発の推進

ジョンソン・エンド・ジョンソンは様々な健康問題に対処するデジタルソリューションを発明しており、ウェアラブル技術も積極的に開発しています。

 

①アレルギーの発症を予測できるアプリの開発

花粉症は日本だけでなく、海外でも見られる症状です。

アレルギー治療薬で対策している人は多いですが、花粉の予測は難しく、服用のタイミングがずれてしまうという問題があります。

ジョンソン・エンド・ジョンソンが開発したアプリは、患者が住んでいる地域の花粉数と症状の度合いの予測を提供することでタイムリーな服薬が可能となります。

また、このアプリはプロファイルを作成できるのでデータを長期的に追跡してアレルギー症状に影響を与える行動パターンなどを特定できます。

 

 

②血糖値監視アプリの開発

糖尿病を患っている人にとって、血糖値の把握は非常にストレスを感じる作業です。

この作業を容易にするため、ジョンソン・エンド・ジョンソンは血糖値の測定結果を可視化するアプリを開発しました。

これにより血糖値が高くなる時間帯などに気づくことができます。

また、データは医療関係者と共有することもできるので医師も患者の血糖値の正確な推移を理解できます。

 

手術用ロボットの開発

ジョンソン・エンド・ジョンソン手術を簡単に行うための高精度で安価な手術ロボットの開発を行なっています。

このロボットのプラットフォームは常に学習を行うため、様々な状況を学習することで外科医に適切なタイミングで最良の情報を提供します。

また、より多くの手術が低いコストで利用できる可能性があり、スキルがない医師でも実施できる可能性もあるのです。

さらに、ネットを介して異なる手術ロボットに接続することで、ロボット間での迅速な学習を促進しロボットのスキルを向上させることができます。

長期的に見ると、外科用ロボットが自動化されることで医療の生産性が向上する可能性があります。

 

Johnson & Johnson to disclose robot-assisted surgery plans in May

 

各種指標

 

ここからはジョンソン・エンド・ジョンソンの売上高、営業利益、営業利益率を見ていきたいと思います。

売上高・営業利益共に毎年安定した金額を計上しています。

コロナ禍からの回復で医療機器の売り上げが伸びています。

医薬品やヘルスケア関連の商品を扱う企業ですので業績が急上昇、急降下することは考えにくく、そのため毎年安定した利益を上げられるのでしょう。

また、取り扱う製品が幅広く、どこかが不調でもダメージが少ないことも特徴です。

営業利益率は毎年25%前後と非常に高く稼げるビジネスを行なっていることがわかります。

医薬品は一度承認されるとしばらくは独占できます。

そして薬の原価自体は低いため営業利益率が高くなる傾向があるのですが、それにしても25%前後という数字は驚異的と言えるでしょう。

このように稼げるビジネスを行なっているので潤沢なキャッシュを持つことができ、株主還元につなげられるということですね。

つまりいつ見ても安定した決算で、特別サプライズがあるわけではないというのが特徴です。

 

今後の展望とまとめ

以上のようにジョンソン・エンド・ジョンソンは利益率の高い医薬品、医療機器を手がけ、毎年安定した利益を出す企業と言えるでしょう。

また、DX戦略も進めており、将来の成長の種も蒔いている段階ともいえます。

こうした地に足のついた戦略を取り、確実に成果を上げているからこそ毎年安定した利益を出せるのです。

今後は先進国を中心に高齢化が進むため、新たな薬への需要や手術の回数も今よりも増えていくでしょう。

こうした需要をジョンソン・エンド・ジョンソンは取り込んでいくことで更に成長できると確信しています。

医薬品から消費者までのヘルスケア商品を手掛けるジョンソン・エンド・ジョンソン

世界の健康寿命を延ばしていくことに期待したいです。