世界の企業研究

世界の企業を知っていこう

日本特殊陶業銘柄分析 ~事業転換を図る自動車部品メーカーの企業研究~

概略

日本特殊陶業は愛知県名古屋市に本社を置く自動車部品及びセラミックメーカーです。

NGKスパークプラグのメーカーとして広く知られており、プラグは世界シェア1位を誇ります。

日本特殊陶業は全世界で事業を展開しており、海外売上比率は8割を超えるグローバル企業です。

また、2023年4月から英文の称号を「 Niterra(ニテラ)」としています。

 

事業内容分析

自動車関連部品

日本特殊陶業主力製品は自動車関連部品です。

「プラグ」と「センサ」を製造しており、特にスパークプラグでは世界シェア1位を誇っています。

プラグはエンジンを動かす重要な役割を果たしており、プラグがなければ自動車は走ることができません。

センサはエンジンを安全で効率的に動かすために振動や排気ガスをセンシングする部品です。

 

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS06537/8d04f4f7/237c/4f43/a61f/888aa480d2e1/20231106092522372s.pdfを参照し作成

 

自動車関連部品の最新業績(24年度上期)はプラグ、センサともに増収しました。

中国をはじめとする景気の鈍化の影響を受けながらも新車販売台数の増加に伴い、自動車関連部品の供給も増えました。

販売地域別にみても増加した地域が多く、想定以上の増収となりこの分野は好調と言えます。

 

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS06537/8d04f4f7/237c/4f43/a61f/888aa480d2e1/20231106092522372s.pdf

 

また、為替の影響もあり、増収となっています。

しかし、プラグ・センサともにエンジンの部品です。

そのため、EV(電気自動車)には不要な部品になります。

先進国ではEVへのシフトは避けられない状況ですので、今後は縮小が見込まれます。

新興国ではまだエンジン車が主流ですのですぐにジリ貧になることはないですが、将来的には縮小していくことが避けられません。

そのため、日本特殊陶業は新規事業を育てるべく奮闘しているのです。

 

セラミック

日本特殊陶業はセラミックの製品も製造しています。

医療・自動車・半導体など幅広い領域で使用されている圧電セラミックスをはじめとする様々なセラミック製品を製造しています。

 

https://contents.xj-storage.jp/xcontents/AS06537/8d04f4f7/237c/4f43/a61f/888aa480d2e1/20231106092522372s.pdfを参照し作成

 

セラミックの最新業績は前年と比べて減少しています。

これは主に半導体製造装置用の部品の市況が低迷し、需要が減少したことが要因です。

また、この分野で呼吸器も製造しているのですが、中国メーカーが参入し競争が激化したため減少したという要因もあります。

 

各種指標分析

売上高・営業利益

https://irbank.net/E01136/results#c_1を参照し作成

 

日本特殊陶業の売上高・営業利益を見ていきたいと思います。

売上高・営業利益は毎年増加しており、順調に業績を伸ばしています。

また、利益率が高い製品で世界シェア1位を誇っているため安定した収益を上げることができるということでしょう。

今後は利益率の高い自動車部品で安定した収益を計上し、それを成長分野に投資していくことで新たな収益基盤を作っていくことが予想されます。

 

EPS(1株利益)

https://irbank.net/E01136/results#c_6を参照し作成

 

続いてEPS(1株利益)です。

EPSは1株当たりいくら儲けているかを確認するための指標で、この数字が成長していれば稼ぐ力を伸ばしていると考えられます。

日本特殊陶業のEPSは毎年増加しており、順調に稼ぐ力を伸ばしているといえるでしょう。

また、この数字が高いほど競争力の高いビジネスを展開しているとも言えるので現在の日本特殊陶業は稼げるビジネスを展開していると考えてよさそうです。

 

自己資本比率

https://irbank.net/E01136/results#c_12を参照し作成

 

次は自己資本比率です。

自己資本比率は企業の財務健全性を確認するための指標で、この数字が高ければ高いほど安全と言えるでしょう。

日本特殊陶業自己資本比率は60%近くで高い数字です。

手元のキャッシュもあり、事業継続に不安な部分はありません。

 

配当・配当性向

https://irbank.net/E01136/results#c_24を参照し作成

 

最後に配当・配当性向です。

日本特殊陶業の配当政策は完全業績連動型のため、年によって減配があります。

配当性向も40%としているので利益が減少すれば配当も減少するというわけです。

2024年も6円の減配となっています。

 

まとめ

以上のように日本特殊陶業はプラグとセンサで安定した収益を確保しつつ、将来の事業の柱を育てている企業と言えるでしょう。

ただし、売上をセグメント別にみると、自動車部品が8割を占めている状況です。

 

 

今後はEVへの世界的なシフトが勢いを増してくことが予想されますので、このままエンジン部品を製造するだけでは売り上げは減少に転じていくでしょう。

 

現在はまだ先進国でも新興国でもエンジン車が主流ですが、2030年をピークにエンジン車は減少になると予想されています。

 

https://www.ngkntk.co.jp/ir/pdf/long-term-management-plan.pdf

 

この資料を見ると黄色の部分(電気自動車)がどんどん増えており、緑や青の領域が小さくなっていることがわかります。

 

そのため日本特殊陶業は自動車部品以外の収益の柱を作り、事業ポートフォリオを転換するとしています。

 

https://www.ngkntk.co.jp/ir/pdf/long-term-management-plan.pdf

 

今後日本特殊陶業が注力する分野として、

  • 環境・エネルギー
  • モビリティ
  • 医療
  • 情報通信

の4つがあげられます。

セラミック素材やセンシング技術などこれまで培った技術を活用して新領域へ挑戦を行っています。

 

https://www.ngkntk.co.jp/ir/pdf/long-term-management-plan.pdf

 

医療事業においては日本特殊陶業アメリカのヘルスケア振興企業に出資を行うことで事業規模の拡大をしています。

また、現在の主力であるエンジンの部品についてもデンソーから同事業の分野を買収するなどして規模を拡大しています。

 

EVへのシフトは進みますが、エンジン車が全くなくなるというわけではありません。

特に発展途上国ではエンジン車が主流で高価なEVは普及に時間がかかるとの見立てもあります。

 

現在主力であるエンジン部品で安定的に利益を確保し、それを新規事業へ投資することで新たな事業の柱を育てるという戦略を行っています。

事業ポートフォリオの転換は簡単ではないですが、技術力のある企業ですので成功を期待したいです。