概略
東京海上ホールディングスは東京都千代田区に本社を置く保険持株会社です。
傘下に東京海上日動火災保険などを持ち、損害保険事業・生命保険事業・海外保険事業・金融事業を行っています。
2023年時点で総資産、正味収入保険料、純利益において国内最大の損害保険グループとなっています。
事業内容分析
保険事業はストック型ビジネスの典型
そもそも保険ビジネスというのは「大勢の人からお金を集めて、少数の不運な人にお金を渡す」というものです。
多くの人から保険料というお金を先に集めて、保険会社がサービスを提供するのはなにかが起きてからになります。
実際に何も起こらない可能性もありますし、その間に保険会社は集めた資金を活用して稼ぐことができます。
投資の神様と言われるウォーレンバフェットが率いるバークシャーハサウェイも保険事業を行っています。
つまり保険ビジネスは非常に稼ぎやすいビジネスであり、ストック型ビジネスの典型と言えると思います。
ストック型ビジネスとは一度契約したら、その契約が終了するまで継続的に収入が得られるビジネスモデルです。
先にお金が入ってきて、サービスを提供するのはその後になりますので安定した収益を上げることができます。
また、利益率も高くなるのも特徴です。
東京海上のビジネス
東京海上HDは国内事業と海外事業のバランスが良いことが特徴です。
事業別利益では海外事業が54%、国内事業が46%となっています。
また、事業展開地域も偏ることなく全世界でビジネスを行っています。
そのためリスクも分散されていると考えていいと思います。
国内事業では主に
の保険を取り扱っています。
このうち一番ウェイトを占めているのは自動車です。
特約や車両保険の付帯率の上昇など単価を上げることで保険料収入が大きくなるので損害保険会社にとっては非常に重要な分野です。
新車販売台数の緩やかな減少という流れはありますが、それを料金改定や商品改定などの施策でカバーしていくことを東京海上HDは見込んでいます。
今後は自動運転技術が進展し、自動車保険市場は縮小することが見込まれています。
しかし、自動車の高度化や責任関係の複雑化が進むにつれて、社会インフラとしての保険会社への期待は高まるとされています。
東京海上ホールディングスは海外事業にも非常に注力しています。
世界合計保険料に占める割合も40%以上となっており、アメリカの保険市場がいかに大きいかわかるかと思います。
また、日本を含む多くの先進国が対前年増率で減少しているのに対し、アメリカは増加しているのでアメリカの保険市場に注力することが重要になってきます。
損害保険は先進国では経済成長に連動して成長していきますが、保険の普及率が低く人口が増加している新興国では経済成長を上回る成長を見せています。
そのため、新興国市場でシェアを握ることも今後の成長には欠かせないといえるでしょう。
東京海上は先進国でも新興国でもビジネスを展開していますので今後もビジネス展開地域を拡大していくのではないでしょうか。
海外で事業を行う傘下の企業もニッチな市場で高シェアを握るビジネスや富裕層をターゲットにした保険商品の提供を行うビジネスなど分散していますので今後も東京海上は安定した事業を展開していくことができると考えています。
各種指標分析
営業収益・当期純利益
東京海上HDの営業収益・当期純利益を見ていきたいと思います。
まず、営業収益に関しては毎年順調に成長しています。
これはストック型ビジネスの典型と言える保険ビジネスを行っているためです。
毎年安定して保険料は入ってきますので安定した収益を上げることが可能というわけです。
当期純利益に関してはコロナの影響で減少した年もありましたが長期的に見ると増加傾向にあります。
ちなみにMS&ADの当期純利益は1,615億円、SOMPOホールディングスは911億円です。
この数字から東京海上HDが圧倒的な数字を出していることがわかるのではないでしょうか。
損保に関しては東京海上が頭一つ抜けていると言ってもいいかもしれません。
EPS(1株利益)
次はEPS(1株利益)です。
EPSは1年間にその会社がいくら稼いでいるのか1株当たりで表したもので増加傾向にあるほど稼ぐ力が伸びていると判断できます。
東京海上HDのEPSはコロナ禍の2021年度は前年と比べて減少し低い数字でしたがその後は回復し長期的にみると増加傾向にあり、堅調と言ってもいいと思います。
自己資本比率
次は自己資本比率です。
保険業という事業の特性上、自己資本比率は一般的な企業と比べて低くなる傾向があります。
そのため、同業他社と比較することが重要になりますので今回はMS&AD、SOMPOと比較をしてみます。
このグラフを見るとわかる通り、自己資本比率は他のメガ損保も低い数字です。
そのため、東京海上HDだけが低いのではなく、むしろ損害保険の中では平均的な数字と考えていいでしょう。
営業活動によるCF・現金
次は営業活動によるCFと現金の推移です。
キャッシュ・フローとはキャッシュ・イン(会社に入ってくる現金)とキャッシュ・アウト(会社から出ていく現金)の差額のことです。
営業活動によるキャッシュ・フローとは本業でどれだけキャッシュを稼げたかを意味し、本業における現金収支を意味します。
この数字が黒字であると本業できちんと利益を出していることを指し、何年も赤字だと本業で稼げていない状況が続いていることを意味します。
東京海上HDの営業活動によるキャッシュ・フローは黒字で推移しており、本業できちんと稼いでいることがわかります。
また、現金の推移も安定しており、手元のキャッシュも潤沢です。
配当・配当性向
最後に配当と配当性向の推移です。
まず、配当は上場以来、普通配当を減配したことがなく、実質累進配当銘柄です。
またホームページでも「配当を株主還元の基本と位置づけ、利益成長に応じて持続的に高める方針としている」とあり、今後も増配が期待できます。
配当性向はコロナの2021年は100%を超えていますがそれ以降は40~50%となっており、理想的な数字と言えるでしょう。
まとめ
以上のように東京海上HDは国内事業では自動車を中心に安定して収益を上げ、海外でも積極的に事業を展開することで収益を拡大している企業と言えるでしょう。
また、東京海上HDは新たな事業も創出することでさらなる成長への投資も行っています。
防災・減災へのソリューションは今後必ず必要になる領域なので需要は高まると考えています。
気候変動の影響による豪雨や山火事のリスクの高まりを背景に「5G」や最新技術を活用して取り組む企業が増えていますので東京海上HDも注力するのでしょう。
また、モビリティ事業ではこれまで蓄積したリスクマネジメントのノウハウを生かすことで新たなソリューションを提供することとしています。
今後は自動運転やコネクティッドカーなどこれまでの自動車とは異なる形態のモビリティが増加するとされており、新たな保険の領域として期待されています。
以上のように新たな領域にも注力しており、今後も東京海上HDのビジネスに抜かりはないのではないかと考えています。