概略
洗剤・トイレタリー関連の日用品で日本最大手であり、化粧品メーカーのカネボウを子会社としています。
花王は、生活者向けの事業である「コンシューマープロダクツ事業」と産業界向けの事業である「ケミカル事業」の2つの事業を行っています。
また、株主還元に非常に積極的な企業であり、33期連続増配を達成しており、増配ランキングで1位の地位を誇っています。
事業内容分析
花王には大きく分けて2つの事業を行っています。
生活者向けの製品を扱う「コンシューマープロダクツ事業」と産業界のニーズにきめ細かく対応した製品を扱う「ケミカル事業」です。
コンシューマープロダクツ事業
コンシューマープロダクツ事業はさらに4つに分かれています。
その4つの事業とは
です。
ハイジーン&リビングケア事業
ハイジーン&リビングケア事業の商品には「アタック」「ハミング」をはじめとする衣料用洗剤と「キュキュット」などの食器用洗剤があります。
また、生理用品やおむつもこの事業で展開しています。
この事業の強みはブランド力のある商品が多いということです。
「ハイジーン&リビングケア事業」の最新の業績は前年と比較して伸長しています。
これは衣料用洗剤や食器用洗剤商品の価格を上げたことが主な要因です。
一方で生理用品やおむつなどのサニタリー製品についてはアジア特に中国で苦戦しています。
現地企業の安価な商品との競争に対抗できていないという事実がありますのでこの部分に関して花王は構造改革を実施しています。
ヘルス&ビューティーケア事業
ヘルス&ビューティーケア事業の商品には「ビオレ」や「メリット」といった一般消費者向けのヘルスケア商品とヘアサロンケア向けの商品があります。
この事業においても多くのリーディングブランドを持っていること、衛生や環境に対応した多様な技術を持っていることが強みです。
ヘルスケア&ビューティーケア事業の最新業績も前年と比べて伸長しています。
こちらも製品の値上げと高付加価値製品の貢献が伸長の要因です。
また、外出需要が回復し、UVケアやメイク落としの商品などが好調だったことも慎重に貢献しています。
販売実績は日本と欧州は伸びたものの、アジアや米国では減少しているのでこの分野においても改革は必要になってくるでしょう。
ライフケア事業
ライフケア事業の商品は「ヘルシア」といった健康飲料や「セイフキープ」といった除菌シートなどがあります。
この事業の強みはメタボケアやスキンケア技術を既存事業から得ていることと研究開発で培った技術があるということです。
ライフケア事業の最新業績は前年と比べて減少しています。
コロナ禍において拡大した消毒剤の需要が減少したことが主な要因です。
また、ヘルシアも健康を意識した商品が様々な企業から展開されており、競争にさらされているため減少しています。
今後は異業種とのコラボなど新たなビジネスモデルを開拓するとしています。
化粧品事業
化粧品事業では「KANEBO」や「KATE」といったブランドを展開しています。
多くのブランドを持っていることが強みではありますが、同時に弱みでもあります。
すなわち、売れるブランドが売れないブランドの赤字を補う体制になってしまう危険性があるということです。
化粧品事業は前年と比べて減少しています。
特に中国市場において大幅に減少したことが要因です。
中国の化粧品市場は回復基調にあるものの、販促活動の抑制などの理由により大幅な前年割れとなりました。
また、中国では日本企業の製品を敬遠する動きが続いており、アジア事業の化粧品売上は14.1%も減少しました。
ケミカル事業
ケミカル事業は油脂や機能材料などを幅広い産業に展開しています。
これはおいしさを長持ちさせる油脂や良い匂いのする洗剤といったような商品価値を高める機能を持った商品です。
ケミカル事業は前年と比べて減少しています。
主に海外での需要が低迷したことが要因であり、回復にはまだ時間がかかりそうな状況です。
最新業績のまとめ
花王の最新業績を見てみると、日本においては値上げの浸透などにより売上が増加したものの、海外事業はすべてマイナスという状態になっています。
上記でも述べたように特に中国市場で不振が続いており、ビジネスモデルの見直しが必須な状況と言えるでしょう。
各種指標分析
売上高・営業利益
ここからは花王の売上高・営業利益・営業利益率を見ていきたいと思います。
まず売上は毎年増加しています。
一般消費財という成熟市場でありながら毎年わずかでも増加しているのはさすがと言えるでしょう。
しかし、営業利益は減少を続けています。
2023年には5%を切るなど良い数字ではありません。
原材料価格の影響を受け、値上げを行っているものの、トイレタリー・化粧品ともに苦戦が続いています。
今後の構造改革が急務な状態と言えるでしょう。
EPS(1株利益)
続いてEPS(1株利益)の推移です。
EPS(1株利益)とは「1株当たりいくら儲けているのか」ということを表した指標です。
この数字が毎年増加していると毎年稼ぐ力を伸ばしている企業と判断できます。
花王のEPSは近年毎年減少しています。
つまり稼ぐ力が減少しているということになります。
海外事業の不振や化粧品事業の不安定感が主な要因になります。
この数字についても構造改革で改善させることが急務かと思います。
自己資本比率
続いて自己資本比率です。
自己資本比率は企業の財務健全性を確認するための指標でこの数字が高ければ高いほど安全と言えます。
花王の自己資本比率は50%を超えており、この数字には問題はないと言えます。
また、手元のキャッシュにおいても事業継続に問題のない数字ですのですぐに倒産するという心配はありません。
配当・配当性向
最後に配当と配当性向の推移です。
花王は33年連続増配銘柄であり、増配連続ランキングで1位です。
2023年度も増配を予定しており、株主還元に積極的な企業と言えるでしょう。
また、中期経営計画では2030年度の到達目標の一つとして41期連続増配を挙げています。
業績は苦しい状況ですが、それでも増配しようという姿勢は株主還元を重視している企業として評価できます。
配当性向は増加をしており、80%を超えています。
これが100%を超えてしまうと、利益の範囲内では配当できず、剰余金から取り崩して配当していることになるため、今後注視が必要になってきます。
配当とは純利益の中から出されますので、配当性向が100%近くだと純利益のすべてを配当に回しており、企業の成長に純利益を使用していないということになります。
そのため、配当性向が高すぎるのも危険と言えます。
個人的には40~70%程度が理想かと思います。
花王の構造改革
以上のように花王の業績は現在苦しい状態ですが、花王も何もしていないわけではありません。
構造改革と称してテコ入れを図っており、選択と集中に手をかけています。
そもそも花王の事業領域は日用品、飲料や薬品など多岐にわたります。
事業範囲が広すぎるため戦力が分散してしまったことが近年の不振の理由だということです。
業績にブレーキがかかっても経営資源の投入が中途半端になってしまうので、ブランドの競争力が低下してしまいます。
例えば、中国の紙おむつでは現地企業との価格競争に陥り、生産撤退に追い込まれています。
また、海外展開の戦略もあまりいいものではありません。
中国のおむつ市場ではマーケティングをほとんど行っていなかったようで、現地のニーズに対応した商品を展開できていなかった事実があります。
花王は構造改革費用を計上することでうみを出し切るとしており、業績な芳しくない領域からは撤退するとしています。
もう一つ構造改革で着手しなければならないのが化粧品事業です。
現在約30のブランドがある化粧品事業ですが、約10ブランドで統廃合や売却を視野に入れています。
そのうちの7ブランドがカネボウ化粧品が作り出したものです。
海外の化粧品大手と対抗するための巨額買収でしたが、その効果は発揮できませんでした。
今後は量よりも質を重視する戦略に転換し、収益力の回復を図るとしています。