概略
コストコ・ホールセール(以下:コストコ)はアメリカのワシントン州に本社を置く会員制倉庫型卸売・小売チェーンです。
コストコのストアコンセプトは、入荷したままのパレットに乗っている商品を大型の倉庫に並べて販売することにより、商品管理や陳列にかかるコストや手間を徹底的に抑える倉庫店スタイルです。
世界展開も行うグローバル企業で、860の倉庫店を展開しています。
ビジネスモデル
コストコのビジネスモデルの最大の特徴は会員制ビジネスだということです。
コストコでは年会費を払って会員になることで、安く商品を購入することができます。
つまりコストコは仕入販売の利益だけでなく、会員収入も大きな収入源となっています。
そして両者の利益を組み合わせて目標利益額を狙う戦略をとっています。
また、会員のランクも分かれており、総会員の約60%以上が様々な特典がつくエグゼクティブ会員になっています。
また、現在も会員数は右肩上がりで増加しており、まだまだコストコは成長の余地があるといえるでしょう。
また、コストコの1店舗当たりの売上は2.45億ドルと記載されています。
日本円にすると約300億円強となり、1店舗で非常に売上を上げていることがわかります。
ただ、コストコの商品数は約4000と他の小売店と比べると少ない印象を受けます。
ここから考えると、コストコは少ない商品を大量に仕入れ、広大な面積の倉庫で大量に販売することで利益を上げていると考えられます。
ではなぜ商品数が他の小売店と比べて少ないのでしょうか。
これは「ボリュームディスカウント」を行っているためです。
ボリュームディスカウントとは少ない種類の商品を大量に仕入れることで1個当たりの単価を下げる事です。
例えば缶ビールを1本ずつ買うより、ケースで購入した方が1本あたりの金額が小さくなると思います。
そしてコストコはその商品を原価に近い値段で販売しています。
そのため、コストコの会員は安い商品を大量に買うことができるのでメリットがあります。
そしてコストコは原価に近い値段だとしても売れれば利益が出ますし、会員収入で更に利益を手に入れることができます。
つまり、会員にとってもコストコにとってもWin-Winの関係にあります。
各種指標
ここからはコストコの売上高、営業利益、営業利益率を見ていきたいと思います。
まず、売上は毎年増加しています。
これは会員数が毎年伸びていることにより会員収入の増加が主な要因だと考えられます。
営業利益は3%前後と低い数字ではありますが、小売業の特徴として全体的に営業利益率は低いという傾向があります。
また、売上が伸びているのに営業利益が伸びていない理由ですが、これは売上の増加に伴って売上原価の増加しているからです。
コストコのビジネスモデルとして大量の商品を仕入れて安く売り、それが終わったらまた新たな商品を大量に仕入れて販売するというような回転率の高い販売方法をしています。
そのため、売上が増加するということは同時に売上原価も上がっているということです。
よって、売上から売上原価と販管費を差し引いた営業利益は毎年ほとんど変化しないことになります。
今後の展望とまとめ
以上のようにコストコは広大な面積の倉庫で商品を大量に販売するとともに、会員収入で安定した利益を計上している企業だと言えるでしょう。
しかし、上記で述べたように売上と共に売上原価が増加するので利益を出すためには販管費(=営業費用)を抑える必要があります。
今後も販管費を抑え続けることができるのでしょうか。
その答えとしてコストコは倉庫型の店舗を採用しているのです。
まずコストコはメーカーから直接商品を購入し、その商品を倉庫(=店舗)に直送しているので配送コストが削減されています。
また、そのまま倉庫で販売するので物流コストも抑えることができます。
倉庫兼販売機能を有したコストコのビジネスモデルは画期的とも言え、これにより販管費を抑えることに成功しているのです。
また、商品数が少ないので在庫管理や倉庫管理を少人数のオペレーションで回すことができ、人件費の削減にもつながります。
店内の内装も簡易的なものなので無駄な経費がかかりません。
とにかく無駄な経費を削減することでコストコは現在のビジネスモデルを確立できているのです。
他の小売店とは違って広大な土地が必要な倉庫型のビジネスは簡単に模倣はできませんし、会員収入もコストコの特徴なので模倣したとしてもコストコの二番煎じとなるでしょう。
この点で他の小売店とは差別化が図れており、コストコの強みとなっています。
消費者としても会員になれば商品が安く大量に買えるので、今後もコストコの会員は増えていくことが予想されます。
その結果さらに売上を伸ばしていくでしょう。
会員制と倉庫型店舗という2つの強みで成長を続けるコストコ。
今後も広大な店舗で大量の商品を手軽に購入できる消費者の味方として発展していくでしょう。