概略
Nikeはアメリカのオレゴン州に本社を置く世界最大のアスレチックシューズとアパレルを手掛けるスポーツ用品大手メーカーです。
Nikeの経営理念は、
世界中のすべてのアスリートにインスピレーションとイノベーションをもたらすこと
としており、身体さえあれば誰もがアスリートとされています。
ビジネスモデル
Nikeの全体像を見ると、スポーツ用品の中で主要な収入源はスニーカーなどのフットウェアです。
フットウェアでは主に卸売業者を通じた売上が大きく、世界中にNikeブランドを広めています。
2017年のデータによると収益の60%はフットウェアが占めており、28%がアパレル、その他としてスポーツ用品やコンバースブランドなどが占めています。
そんなNikeのビジネスモデルの特徴は需要を創造する力にあります。
2017年のデータによるとNikeは33億ドルもの金額を需要創造に費やしています。
需要創造の内容は広告やプロモーションの費用、スポーツ選手とのスポンサー契約、デジタル広告です。
NikeはブランドのPR、広告宣伝に資金を惜しまずつぎ込み、消費者の需要を創り出すことに注力し、それが売上を支えています。
ハイブリッド戦略
Nikeは近年一般流通とD2C(EC×直営店)を掛け合わせたハイブリッド戦略を展開することで成功を収めています。
これはトップアスリートの支援やハイブランドとのコラボなどスポーツとファッションの両面でファンを獲得したことによるものです。
スマホアプリを軸にした積極的な情報発信やスニーカー情報に特化したアプリ「SNKRS」で行われる限定商品の販売などデジタルをうまく活用することでD2Cビジネスを成功させています。
また、メインアプリとの連携も含めた直営店×EC(オムニチャネル)で、定価購買する仕組みを作ったことも成功の要因です。
この戦略に寄与したのが、LGBTQやBlack Lives Matterなど人権問題を扱う社会派メッセージ、リサイクルポリエステル素材を使用したサスティナブルな製品の販売などデジタルが得意な「情報更新頻度」「多くのプロダクトを主人公にしたストーリー」の展開です。
このようなメッセージを持った広告を打つことでNikeのブランド性を高めてきました。
Nikeの製品の共通点はすべてNikeのロゴである「スオッシュマーク」のついた靴であることです。
価格帯も5000円で購入できるものもあれば、2~3万円とやや高価格帯のもの、さらには数百万円のプレミアム製品もあります。
それぞれの価格帯やモデルによってユーザー層は異なりますが、どの製品でも「Nikeの製品が欲しい」と思わせるNikeのハイブリッド戦略は理想のビジネスモデルと言えるでしょう。
各種指標
ここからはNikeの売上高、営業利益、営業利益率を見ていきたいと思います。
まず売上高は毎年増加しており、順調に業績を伸ばしている企業だと言えます。
これは上記のD2C戦略が成功していることが主な要因です。
一方で営業利益率に関しては10%前後をキープしています。
メーカーで10%を超えると優良企業と言えますのでこの数字は優秀と言えます。
営業利益が売上高のように毎年増加していない理由ですが、広告費の増加やグローバル展開における人件費の増加などがあげられます。
しかし、ブランド戦略で成功し売上高が毎年増加しているため今後も安定的な経営を行うことが予想できるかと思います。
今後の展望とまとめ
以上のようにNikeはブランドメッセージを的確に使用し、D2Cを絡めたハイブリッド戦略を展開することで順調に売上を伸ばしている企業といえるでしょう。
ただ現在はアメリカでのインフレにより価格が高騰しており、消費者の間で衣類や靴を買い控える傾向があります。
さらには学生ローンの債務返済の再開により更なる買い控えが起こる可能性があります。
しかし、その消費者のマインドを変える戦略をナイキは持っています。
それこそが需要創造に莫大な費用をかけるNikeの強みであり、厳しい市場環境でも製品価値を落とさず売上を伸ばしていくのではないでしょうか。
ブランド価値の高さと優れた戦略で商社の購買意欲を掻き立てるNike。
今後もブランドの価値が落ちることはないと考えています。