概略
IKEAはスウェーデン発祥で、世界各地に店舗を展開している世界最大の家具量販のコングロマリットです。
郊外に大型の店舗を展開しているのが特徴で、店舗内にはカフェテリア方式のレストランがあります。
青色と黄色を基調とした外観は世界共通であり、どの国でも店舗入り口前には出店先の国の国旗とスウェーデン国旗の両方を掲げています。
安い価格やおしゃれなデザイン、アフターサービスの質の高さから世界中の顧客から評価されている企業の一つです。
ビジネスモデル
IKEAの特徴として有名なのは自社で製造工場を持たないファブレス企業であると言うことです。
それに加えてIKEAは幾つかのビジネスモデルを確立しています。
独特な買い物システムとコスト削減
IKEA平均的な店舗面積は約3万5千平方メートルで、8000以上のアイテムがそろっています。
IKEAは都心のデパートと競争するのではなく、繁華街から離れた場所に大きな立体ビルを建てています。
そのため都心と比べてはるかに安い不動産で、巨大な駐車場を併設することができるのです。
また、IKEAでの買い物は入り口からレジまで基本的に一方通行となっています。
これはIKEAは顧客の買い物体験を完全にコントロールし、すべての売り場を見て回るよう狙いがあってのことです。
このシステムにより、IKEAの多くの店舗は平均滞在時間が1時間半と非常に長くなっています。
また、買い物中に休憩できるカフェテリアや託児所が設置されていることも長時間滞在の理由でしょう。
その結果として1人当たりの利用金額も上がるというわけです。
分解式家具
IKEAの商品は店舗で家具のパーツやセットを購入し、自分で説明書を見ながら組み立てるかと思います。
これを文字通り「分解式家具」といいます。
分解式家具にすることで、商品の梱包面積や輸送費の削減、組み立てにかかる人件費の削減、店舗スペースの有効利用につながります。
その結果、コスト削減分を価格に反映させることができるので安価な商品を展開できるのです。
また、人は自分で組み立てた家具を長く大事にする傾向があるそうでこれもIKEAをリピートする理由につながっていると考えられます。
世界共通の商品
IKEAの商品のもう一つの特徴は全世界で共通のデザインだということです。
一部日本に合わせた商品開発も行っているようですが、基本的には説明書も英語で書かれています。
また、IKEAは商品の目標価格を設定してから、20人ほどのデザイナーに商品を送り、デザイナーはその制約の中で仕事をしています。
家具の値段を決めてからその範囲内で最大限の価値を生み出すことを念頭に置いているのも特徴です。
IKEAというブランド
1973年にスイスでスタートしたIKEAはその後数十年にわたりヨーロッパ全域で国際的な展開を始めました。
そしてスウェーデンらしさを前面にアピールしてきました。
IKEAの戦略は、様々な市場に参入してそれぞれ最適な場所に少数の店舗を展開することです。
例えば、アメリカには50店舗展開しているのに対して、17の国や地域には1店舗しかありません。
このアプローチの成功がIKEAのグローバルブランドの証と言えるでしょう。
また、IKEAのイメージは世界中で非常に強く、ある国に1店舗だけ出店してもすぐに認知され愛される存在となります。
機能的なデザインの家具や特徴のある名前などはスウェーデンらしさを感じますし、鮮やかなブルーとイエローの店舗は伝統を感じさせます。
このようなブランド戦略もIKEAの強みと言えるでしょう。
各種指標
ここからはIKEAの売上高、営業利益、営業利益率を見ていきたいと思います。
まず売上は毎年増加しています。
しかし、営業利益に関しては2022年まで減少していました。
コロナ禍の巣ごもり需要があった中で営業利益率が減少しているのは商品の競争力がやや低下している可能性があります。
実際に日本ではIKEAはニトリなどの競合に苦戦を強いられています。
これは日本では自分で組み立てる文化が根付いていないということと、引っ越しをする際に分解が難しいという理由があげられます。
しかし、2023年には増加に転じており、営業利益は2倍近くになっています。
これは商品の売上の増加に加えて、オペレーティングコストの削減によるものです。
売上は毎年増加しているので業務効率化を行った今後は営業利益も増加していく可能性はありますね。
今後の展望とまとめ
以上のようにIKEAは優れたビジネスモデルを創業当時から一貫して行うことでグローバルブランドになり、世界中から認知されている企業と言えるでしょう。
そして近年は現在のビジネスモデルを核としつつも時代に合わせた戦略に少しずつ舵を取っています。
一つはIKEAの出店戦略です。
近年はグローバルで都心に小規模の店舗を出店するようになっており、日本でも新宿や原宿に出店をしています。
この狙いとして考えられるのは、今後店舗はブランドの世界観を伝える場所や新たな顧客との接点を作る場所であり、実際の購入はネットで行うという戦略です。
実際にIKEAの店舗にはブランドメッセージやコンセプトが掲げられており、店舗が企業のメディアのような役割を担っていると言えるでしょう。
ブランドの世界観を体験してもらうためであれば小規模の店舗でも可能ですし、都心に出店することで車を持たない若い世代にも世界観を伝えることができます。
小規模の店舗だと大型の家具を取りそろえるのは難しいですが、店内にECへのアクセスを促す広告も配置されており、ECでの購入を促しています。
このようにリアルとデジタルを連携して新たな顧客体験を提供するIKEAは今後もブランドの価値を高めながら成長していくのではないかと考えています。
優れたブランドイメージとビジネスモデルで世界中に愛されるIKEA。
将来もリアルとデジタルを連携した顧客体験を提供することでファンを増やし続けていくのではないでしょうか。