世界の企業研究

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世界の即席麵市場 ~激戦の成長市場~

 

即席麵の市場規模

世界の即席麺の市場規模は2022年の546億ドルから2029年までに818億ドルに成長すると予測されています。

コロナウイルスを機に、米ウォルマートをはじめ世界の量販小売店が即席麺の取り扱いを増やし、ほぼすべての地域で予想を上回る需要が発生しています。

インスタントラーメンは1950年代に日本で誕生し、現在では世界90か国以上で生産されています。

これは先進国だけでなく発展途上国でも消費されている最も国際的に認められた食品の一つとなっています。

利便性や味、手ごろな価格や保存性が消費者の間で人気になっている要因です。

 

即席麺市場のプレイヤー

即席麺市場は非常に激戦区となっており、多くのプレイヤーがいます。

その中で世界シェア1位は中国の康師傅(カンシーフ)という企業で、日本の日清食品は2位、東洋水産は5位となっています。

 

康師傅が頭一つ抜けているような印象を受けますが、まだまだ安泰ではありません。

上記でも述べたように世界市場は年々成長しており、アジアだけでなく新たな市場でのシェアを獲得できるかで大きくこの順位は変わってくると予想しています。

そして、現在一番火花を散らしている市場が北米なのです。

 

激戦の北米市場

北米市場について

大手即席麵メーカーは北米の市場開拓でしのぎを削っています。

アメリカは先進国で唯一人口が増加している国で即席麵市場は長期的な成長が見込まれます。

また、安価で保存がきく即席麺はインフレ下で消費者層が拡大しており、各社が力を入れているのです。

世界シェアでは康師傅が1位でしたが、米国市場では東洋水産日清食品、農心(韓国)がビッグ3と言われています。

そしてこの3社が現在アメリカの設備投資を強化しているのです。

アメリカの即席麺総需要は2022年に世界6位で、アジア圏を除くと世界最大規模の市場です。

そしてこの市場はさらに成長が見込まれています。

22年は22億ドルだった市場は27年には24億ドルに成長すると見込まれています。

https://instantnoodles.org/noodles/demand/table/を参照し作成

 

東洋水産の戦略

東洋水産は現在北米市場で最大手です。

東洋水産の主力商品と言えば1972年に発売した「マルちゃん」ブランドです。

1袋30セント(約45円)程度という価格の袋麺が人気となり、ヒスパニック系消費者の胃袋をつかんできました。

ヒスパニック系の年間所得の中央値は2022年に6万2800ドル。アメリカ全体では7万4580ドルに比べ低い数字です。

そのため、低価格の商品がカギとなります。隣接するメキシコでは東洋水産のシェアが約8割にも上ります。

アメリカの人口は2020年から2060年にかけて約3割増の4.2億人に増加するという推計もあります。ヒスパニック系の人口構成比も2割弱から3割超に拡大する見込みです。

そのため、長期にわたって需要が拡大すると考えられ、現在東洋水産では生産性向上と物流の効率化に力を入れています。

工場の生産量を上げるために増強を行ったり、1ドル以上の値段がする付加価値商品の展開を行ったりすることで若年層にブランドを訴求する戦略をとっています。

出典:https://www.maruchan.co.jp/company/project/overseas_instant.html

 

 

日清食品の戦略

日清食品アメリカ市場への投資を行っています。

日本では圧倒的なシェアを誇りますが、成長市場である米国市場では東洋水産にシェアを奪われており危機感があるのかもしれません。

過去5年間で米国市場に設備投資を行った金額の平均はおよそ300億円台でしたが、今年度は700億円の計画と約2倍の金額を投資する予定です。

それほど米国市場が最優先事項なのだと読み取ることができます。

日清は1つ1ドル以上のカップ麺に注力し、プレミアム商品で差別化を図ろうとしています。

例えば、スープのない縦型カップ焼きそばはミレニアル世代の消費者を開拓するなど成果を上げています。

また、「辛さ」も若年層に刺さる要素であり、「HOT&SPICY」と銘打ったカップ麺を積極的に投入しました。

これらの利益率が高いプレミアム商品がアメリカの売上高に占める割合は23年度に5割超となる見通しです。

出典:https://intojapanwaraku.com/gourmet/108947/

 

農心の戦略

辛さを訴求するのは日清食品だけではありません。

日本でも販売されている辛ラーメンを武器にアメリカで躍進したのが韓国の農心です。

農心は2017年にウォルマート全店で即席麺の販売を始め、1~2ドル以上と競合より高めの価格で差別化することで量販店で存在感を示しました。

主力商品の辛ラーメンはあえて「味の現地化」をせず、韓国本場の味付けとしたのもポイントです。

最近では中華麺や日本風うどんなども展開し、広く「アジア商品」を扱う企業として成長しています。

農心も22年にアメリカに新たな生産工場を稼働させるなど生産量の増強に努めています。

出典:https://www.narutabi.com/entry/2021/08/19/000000

 

今後の展望とまとめ

アメリカではアジア系の食品の受け入れが進んでいます。

味の素の餃子やニチレイのチャーハン・唐揚げなどの冷凍食品メーカーもアメリカ市場の開拓に力を入れています。

アメリカは各社の商品展開やシェアが大きく変動する可能性を秘めた市場として現在注目されているのです。

出典:https://asiatrend.org/food/cup-noodles-museum-yokohama/

(参考:2023年11月1日日本経済新聞「即席麺が米国で火花 物価高で節約志向、人口も増加 東洋水産、生産能力を2割増)