概略
三菱商事は東京都千代田区に本社を置く三菱グループの総合商社です。
三菱UFJ銀行、三菱重工業とともに三菱グループの「御三家」と言われます。
総合商社の中でも最大手であり、資源・非資源のバランスが良い商社です。
「総合力の三菱」ともいわれることがあるまさに日本を代表する企業の一つと言えるでしょう。
事業内容分析
三菱商事は総合商社ということだけあって事業内容が非常に多岐にわたっています。
分類すると10事業を行う企業です。
その10の事業とは
- 天然ガス
- 総合素材
- 化学ソリューション
- 金属資源
- 産業インフラ
- 自動車・モビリティ
- 食品産業
- コンシューマー産業
- 電力ソリューション
- 複合都市開発
です。
競合である三井物産は資源に強みを持ち、伊藤忠商事は非資源に強みを持っていますが、三菱商事は資源・非資源のバランスが良いのが特徴です。
そのため、総合力の三菱と言われるのでしょう。
総合商社は近年有望事業へ積極投資し、資産構成を柔軟に組み替えることで成長をしており、海外資源権益と非資源分野への投資のバランスがテーマとなっています。
注力分野
三菱商事は「中期経営計画」においてEX関連事業のポートフォリオを将来的に5割に引き上げていくとしています。
EXとは「エネルギートランスフォーメーション」という意味で、三菱商事は「再生可能エネルギー」や水素・アンモニアなどの「次世代エネルギー」に投資を拡大して行うこととしています。
EX戦略としては、希少性・地域性のあるエネルギー資源の安定提供を行うために全社戦略で対応を行うこととしています。
特に上流工程である資源産出国や地域へのアクセスと下流工程である多様な顧客ニーズの把握を重要と考えており、EXバリューチェーン全体を管理する「脱炭素ソリューションプロバイダー」を目指しています。
特に燃やしても二酸化炭素を出さない水素は次世代エネルギーの本命とされており、発電や自動車燃料、製造業の脱炭素を進めるうえで欠かせない存在となっています。
現在、水素は天然ガス由来の「ブルー水素」が主流ですが、将来的にはより低炭素な再生可能エネルギー由来の「グリーン水素」へと置き換わるとされています。
将来的にはオーストラリアやアフリカなどが主要生産地になるとみられており、三菱商事も注力しているのです。
また、三菱商事はDX戦略にも注力するとしています。
社会的な課題を、IT技術を活用して解決することを目的としています。
総合商社という様々な業界とかかわっている業種だからこそできる事業だと思います。
他の事業においても事業部の垣根を越えて連携し、広い事業基盤を活かして事業を行っていくとしており、総合力の維持に抜かりもないでしょう。
各種指標分析
収益・営業利益
三菱商事の収益、営業利益、営業利益率を見ていきたいと思います。
まず、収益・営業利益ともに2021年に減少しましたが、その後はV字回復を見せ非常に拡大しています。
2021年の減少はコロナ禍において景気が後退したことが要因です。
総合商社は景気によって業績が大きく左右される「景気敏感株」のため、コロナ禍においては業績を落としましたが、近年は資源価格の高騰によって非常に収益を上げているのです。
また、営業利益率は5%以下と平均的な企業だと低い数字ですが、商社業界は全体的に低い数字になります。
ちなみに商社業界の平均的な営業利益率は1~2%前後です。
また、5代総合商社の平均は5~6%なので三菱商事も平均的な数字と言えるでしょう。
EPS(1株利益)
次はEPS(1株利益)です。
1株当たりどれだけ稼いでいるかを表すEPSは数字が成長しているほど稼ぐ力がある企業と判断できます。
三菱商事のEPSはコロナ禍において減少しましたが、その後は回復し2023年は非常に成長しています。
2024年予想では23年より減少はしていますが、それでもコロナ以前の数字よりは高いため、稼ぐ力を増やしていると判断できると思います。
現金
次は現金です。
手元にある現金は1兆を超えており、潤沢なキャッシュがあるといえるでしょう。
また、営業活動によるキャッシュフローも赤字がなく、キャッシュ創出力も極めて高い企業と言えます。
配当・配当性向
最後に配当と配当性向です。
まず配当は2016年以降毎年増加しています。
また、2023年度第2四半期決算短信には
累進配当性の下、多くのセグメントにおける業績上方修正を踏まえ、持続的利益の成長や成長期待、利益の底堅さ、市場からの期待等を総合的に勘案して、一株あたり210円への増配を予定。
としています。
ここから今後も基本的には増配を続け、業績が悪くとも累進配当制により減配はほとんどないのではないかと考えています。
また、配当性向も2021年度は100%を超えていますが、基本的には20~40%のレンジです。
そのため、配当に回せる利益にまだまだ余地があると考えられますので増配が期待できるというわけです。
まとめ
三菱商事は様々な事業を展開し、どこかのセグメントが悪くても他でカバーが効くという総合力の高い企業であり、事業内容においてもキャッシュ創出力が高く手元キャッシュも潤沢な企業と言えるでしょう。
エネルギー資源や金属資源の開発事業は世界で展開しており、建設予定のプロジェクトも数多く抱えています。
また、自動車関連や水産、電力事業においても順調に規模を拡大しており、事業継続に不安な部分はありません。
また、EPSが高いときには増配だけでなく自社株買いも行っており、株主還元に積極的な企業ともいえるでしょう。
日本を代表する企業ですので倒産も考えられないですし、今後もさらに規模を拡大していくのではないでしょうか。